民泊を京都市で始めるには?

query_builder 2024/04/15
許認可関係
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民泊という言葉は、一昔前では旅館業法における簡易宿所を指していましたが、平成30年にできた新しい法律「住宅宿泊事業法」という法律に基づく届け出を、現在では民泊と呼ぶことが多いです。もちろん旅館業法における簡易宿所で民泊と銘打っても良いのですが、法律が分かれてからは、民泊というのは住宅宿泊事業による届け出の事を指すことが増えてきました。

この民泊を始めるためには、旅館業法による許可受けるか住宅宿泊事業による届け出かのどちらかを行わなければなりません。

ここでは、主に住宅宿泊事業について説明していきます。

旅館業と住宅宿泊事業

両者の違いとは?

民泊を始めるにあたって、旅館業の許可または住宅宿泊事業の届出をしなければなりませんが、そもそもこの両者はどう違うのかは、なかなか一般の方には分かりにくいかと思います。

下記は、制度や主な違いなどをまとめてみました。なお、国の法令の他、京都市の条例など独自のものが存在しますので、他府県とは若干違う可能性がございますので、ご注意ください。

旅館業(簡易宿所)と住宅宿泊事業の届出の主な違い
根拠法令 旅館業法 住宅宿泊事業法
申請手数料 52,800円 手数料なし
営業日数 制限なし 最大で年間180日間
住居専用地域では、原則1月15日正午~3月16日正午まで(60日間)
用途地域による制限 住居専用地域、工業地域、工業占用地域等では原則不可 原則制限なし
※住居専用地域など一部営業日数の制限はある
前面道路幅の制限 1.5m以上 制限なし
※ただし、1.5m未満の場合は、家主同居か同町内に現地対応管理者を配置(800m以内)
住居としての利用 原則不可 居住要件としては以下のいづれか
1、現に人の生活の本拠として使われている
2、入居者の募集が行われている
3、随時その所有者、賃貸人または転借人の居住の用に供されている
バリアフリー条例の適用 あり なし
客室面積 延床面以上積33㎡
(定員10人未満では定員×3.3㎡)
宿泊者が占有する面積が定員×3.3㎡
入浴設備、トイレ、洗面 必要
台所 不要 必要
玄関帳場(フロント) 必要(京町家の場合は不要だが、駆け付けが800m以内)
一定の要件を満たせば施設外玄関帳場を利用できる
不要
※ただし、鍵の受け渡しなどは、住居前
管理体制 使用人の駐在が必要※施設外玄関帳場利用の場合は、施設外玄関帳場内 家主が不在となる住宅は、現地対応管理者の駐在が原則必要
使用人、現地対応管理者の駐在場所 原則施設の内部
ただし、施設外玄関帳場の場合は、宿泊施設から道のりで、800m以内(10分以内)※直線距離ではないことに注意
住宅内、住宅が存する建物内(マンションmの一室を住宅宿泊事業で使う場合に、別の部屋を駐在場所にするなど)
家主不在型は、宿泊施設から道のりで800m以内(10分以内)※直線距離ではないことに注意
近隣住民への説明 必要
宿泊実績の報告 不要必要(2ヶ月ごとに宿泊日数、宿泊者数等を報告)
申請・届出後の現地調査 あり


両者のメリット・デメリット

民泊を始めるには、旅館業法による許可か住宅宿泊事業法における届出が必要であるとお伝えしましたが、実際どちらで始めるのがいいかは、申請者または届出者の運営方法や実情によって大きく変わってくると思います。

ここでは、それぞれのメリットデメリットをお伝えします。


<旅館業法許可のメリット>

まずは、旅館業法における許のメリットをお伝えします。なんといっても、営業日数に制限がなく365日営業することができるのが最大のポイントです。季節を問わず、基本的には営業可能ならいつでも宿泊施設を利用してもらえます。さらに、令和5年12月13日に改正された改正旅館業法により、いままで旅館業の許可で出来なかった事業譲渡が可能となり、資産的価値がグンと上がりました。旅館業の許可は、取得までのハードルが高く、また京都市のバリアフリー条例も相まって、すでに許可を取得している物件は重宝されます。また、営業開始してからは、実績報告等もないので、事業に集中できるのも良い点です。


<旅館業許可のデメリット>

次はデメリットについてですが、これは許可を取得した後というよりは、許可を取得するまでのハードルが高いことがそもそものデメリットと言えます。たとえば、一昔前に流行った一戸建てを改装して簡易宿所にするケースでは、基本的にバリアフリー条例が適用されるので、大規模な改装が必要となり、過分に費用がかかります。京町家であれば、一定の緩和措置があるのですが、そもそも純粋な京町家というのはほとんどなく、多くは違法に増改築を施された物件を京町家として販売しているケースがございます。これは、京町家にはお風呂やトイレがない事が多く、後で増設するにあたって、適切に建築審査等を受けずに勝手に増築してしまっている事があり、この場合は違法建築物扱いになります。そのため、実際にバリアフリー条例での緩和措置を利用しようとしても、そもそも違法状態を是正してからでなければ、受け付けてくれない事があります。言葉に騙されず、実態を確認してから許可を取得する物件を探しましょう。また、旅館業の許可を取得してしまうと、建物の用途が旅館となり、基本的に居住はできません。住むことが出来ないので、居住用物件に戻すためには、旅館業を廃止(廃業届を提出)し、現実に住む必要がありますので、ご注意ください。


<住宅宿事業による届出のメリット>

次は、住宅宿泊事業による届出のメリットをお伝えします。こちらは旅館業許可と違い、届出事態のハードルは低いです。ただし、届出書の作成そのものは難易度が高いのでご注意ください。

要件を満たしやすいということです。

住宅宿泊事業は、物件の用途が「居住用物件ですので、現実に住んでいる建物をそのまま民泊として使える制度です。また、設備についても、「宿泊室」、「台所」、「浴室」、「便所」、「洗面」と必要な設備がだいたい揃っているので、大規模な改装が必要なく、最低限の費用(非常用照明など一定の設備は備え付ける)で始めることが出来ます。また、地味に旅館業では度々問題となる窓面積(京都市では旅館業許可では客室面積の8分の1の窓面積が必要)の要件は必要ありません。遮光が遮られていても問題ありません。あと微々たるものですが、届出の為に申請手数料(京都市の旅館業では、52,800円必要)などは必要ありません。要件が住宅であることから、180日の営業日数以外をマンスリーで貸し出すこともでき、ほかにも貸会議室のような使い方もできます。


<住宅宿泊事業における届出のデメリット>

まずは、なんといっても営業日数が最大で180日間(用途地域が住居専用地域では、60日間)しかない点です。しかし、これは旅館業法と差をつけるべく、営業日数に制限を設けているわけですが、180日間とはいえ宿泊施設として事業ができ、また初期費用も少なく済むことから必ずしも、デメリットとは言い切れないかもしれません。事業内容によっては、メリットに転ずる可能性もあります。

それよりは、忘れられがちですが、そもそも住居用物件ですので、賃貸物件を民泊として届出していた場合には、そこに住みたい方がいた場合は、賃貸が優先されます。これは、基本は居住用物件なので、人が住んでいない間放置されるよりは、民泊に使ってもらおうという趣旨の制度であり、現実に住みたい人がいれば済むことが優先されます。さらに、この住みたい方がいる場合に、住むことを拒否できず、住まわせないために高額な賃貸料を請求することも禁止されています。よって、受託宿泊事業における届出をした後で合っても、賃貸物件は常に賃貸募集をし続ける必要があります。あと、手続きそのものが旅館業許可と大差なく、専門家に依頼したときに同程度報酬が発生する可能性があります。事業を開始した後も、旅館業と違い2ヶ月ごとの実績報告が必要となります。これは、1年のうち何日間民泊として利用していたかを把握するため、報告を義務付けています。

結局どっちがいいのか

ともかく事業をバリバリやりたい方にとっては、旅館業許可は大変魅力でしょう。しかし、許可取得までのハードルは高く、またそもそも要件を満たせるかが分かりません。そこで、住宅宿泊事業による届出で、経験をするというのも一つの方法です。

まず、住宅宿泊事業による届出については、基本的な要件は居住用物件ですので、現にお住いの家または賃貸物件などがそのまま使えるのが魅力です。特に賃貸物件をお持ちの方は、空き部屋があるならば、その部屋だけを住宅宿泊事業として届出することができ、ほかの部屋はそのまま賃貸として利用することが出来ます。もともとこの住宅宿泊事業法は、空き家を有効活用することを主軸としているため、事業性が旅館業法より薄い反面、事業開始までのハードルが低いのです。

もし旅館業の許可を取得するのがいいのか住宅宿泊事業による届出がいいのか迷われた場合は、まず、費用対効果がどの程度あるかを試算してみてください。旅館業で許可を取得したからといって、365日全て部屋が埋まるとは限りません。稼働率は場所にもよりますが、90%くらいの稼働率がある地域もあれば60%くらいの地域もあります。観光地であるかも稼働率にかなり影響が出てくるでしょう。ご自身が宿泊事業をしたいと思う場所の平均稼働率がどの程度なのかを考え、旅館業で許可を取得するのにかかる費用(改装など)を計算し、何年でその費用を回収できるかが重要です。5年で回収するのか、10年かけるのか…そこは事業者様次第ですが、宿泊事業というのは、外的要因(自分ではどうすることもできない)で収益がかなり上下します。コロナの様なことが、今後絶対にないとは言い切れませんし、政治の動向によっても日本に来る外国人は上下します。残念ながら、これらはどれだけ魅力的な宿泊業を経営しても、自分ではどうにもなりません。よってかけた費用の回収に過度に長い期間で設定すると、破綻する可能性がありますので、無理のない計画を立てて、事業に臨んでください。

迷ったときは専門家に相談を

京都市は、条例により他府県とは少し違う独自の手続きを採用しています。そのため、他府県に比べるとやや難易度が上がります。住宅宿泊事業法による届出については届出後に、届出の内容に相違ないかの現地確認が行われます。よって、届出であっても、許可制度と何ら変わるところがなく、適切に届出をしなければ、事業者番号を発行してもらえません。悩まれた時は、窓口へ相談されるか行政書士のような専門家へご相談ください。


<住宅宿泊事業法による届出>

・届出書作成代行 242,000円(税込)

・近隣説明代行 121,000円(税込)

 ※説明会が必要な場合は、別途ご相談ください


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